低濃度アトロピン点眼(マイオピン点眼)について
低濃度アトロピン点眼(マイオピン点眼)薬は、近視の進行を抑える効果のある目薬です。低濃度のアトロピン(0.01%、0.025%)を配合させた点眼薬で、シンガポール国立眼科センターの研究に基づいて開発されています。日本でも7大学(旭川医科大学、大阪大学、川崎医科大学、京都府立医科大学、慶應大学、筑波大学、日本医科大学)にて臨床研究が行われています。
濃度は0.01%と0.025%の2種類があります。
近視の進行が完全に止まるわけではありませんが、少なくとも2年間継続して使用することで何もしない方と比べ近視の進行を軽減できたという結果となっています。
この報告の中で、シンガポール国立眼科センター(singapore national eye center)及びシンガポール眼科研究所(singpore eye research institute)で実施された臨床試験によりますと、低濃度のアトロピン(0.01%)は、2年間に亘り近視の進行を50~60%遅らせ、副作用は非常に軽微であることが証明されています。
- アレルギー性結膜炎及び皮膚炎の報告はありませんでした。
- 眼圧に影響を与えないとの報告でした。
- 白内障を形成するとの報告はありませんでした。
- 点眼終了後も目の遠近調節機能の低下、また瞳孔がひらき続けてしまうという報告はありませんでした。
- 電気生理学上、網膜機能に影響を与えるという報告はありませんでした。
出典1: Chia A, Lu QS, Tan .Five-Year Clinical Trial on Atropine for the Treatment of Myopia
2: Myopia Control with Atropine 0.01% Eyedrops Ophthalmology. 2016 Feb;123(2):391-9
低濃度アトロピンの処方、検査、診察について
処方、検査、診察すべてにおいて自由診療で行うことになります。
費用は、以下の通りになります。
0.01%低濃度アトロピン(マイオピン)
- 初回
- 6,800円
(診察・検査 3,500円/点眼薬1本 3,300円) - 1ヵ月後
- 13,400円
(診察・検査 3,500円/点眼薬3本 9,900円) - 3カ月ごと
- 13,400円
(診察・検査 3,500円/点眼薬3本 9,900円)
0.025%低濃度アトロピン(マイオピン)
- 初回
- 7,900円
(診察・検査 3,500円/点眼薬1本 4,400円) - 1ヵ月後
- 16,700円
(診察・検査 3,500円/点眼薬3本 13,200円) - 3カ月ごと
- 16,700円
(診察・検査 3,500円/点眼薬3本 13,200円)
詳細は点眼を行うことになりましたら、医師やスタッフから説明いたします。眼の病気が点眼に関係なく生じた場合には保険診療で行うことになりますが、低濃度アトロピンによるアレルギーや、結膜炎などが生じた場合には、自由診療で行います。ご承知おきください。また、自由診療と保険診療は同日に行うことができないことが法律で決められておりますので、ご不便をおかけすることもありますがご了承ください。
低濃度アトロピン点眼薬の特徴
- 副作用がほとんどない近視抑制薬です。
- 目の遠近調節機能(手元を見る作業)に殆ど影響を与えません。
- 毎日必ず就寝前に1滴点眼します。
- 各容器(1本5mL)は両眼用に1か月間の使い切りです。
1ヵ月経過時に点眼瓶にまだ残っていることが多いのですが、感染症の危険から、必ず、開封してから1か月経過したら、次のボトルを使い始めていただきます。
対象となる方
- 医師の指示に従って通院・定期検査が可能な方
最低でも2年間以上の継続を推奨しています。基本的に3カ月毎の定期通院となります。 - 医師によって適応と判断された方
- 6歳以上の小児
注意事項
- 現在の近視の進行抑制を目的としており、近視を治し裸眼視力を向上させるものではありません。
- 保険適応外の自由診療で行うため、保険診療と同日に行うことはできません。
- 本剤点眼によるアレルギーや結膜炎などの有害事象に対しても「自由診療」となります。
よくある質問
- 点眼をすると近視が治りますか。
- 残念ながら近視を治すことはできません。
- いつ点眼をすればいいですか。
- 夜、寝る前に1回1滴両目に点眼してください。
- 点眼を忘れてしまった場合はどうすればいいですか。
- 点眼を忘れてしまった場合は、次の日の就前に点眼をしてください。
- マイオピンは1本何mLで、どのくらいの期間使用できますか
- 1本の容量は5mLです。他の点眼剤同様、開封後は1か月で破棄してください。
- 1ヵ月経過しましたが、点眼瓶の中に点眼液がまだ残っています。使い続けてもいいですか。
- 点眼は開栓したら必ず1か月で破棄してください。
1日1回なので、1か月経過時にはまだ残っていると思います。
防腐剤も入っておりますが、睫毛などに触れて雑菌は入りやすいです。一度、雑菌が入ると、最初は少量でも1か月経過時には多量に増えます。必ず、1か月で破棄するようにしてください。
ご兄弟での使いまわしも、雑菌がとても入りやすくなります。
使いまわしも絶対に行わないようにしてください。 - 何歳から何歳までが治療対象になりますか。
- 海外の点眼効果の判定結果は対象が4~12歳(2年間使用)です。しかし、近視は12歳を超えても進行していきますので、近視を抑制する可能性はあります。
- 何歳まで治療を続ける必要がありますか。
- まずは、2年間継続の上で、効果をみて治療を継続するかどうか判断するのをお勧めします。
- 効果がないこともありますか。
- 0.01%アトロピン点眼は、9%の方に無効だったという海外の報告があります。点眼後、6カ月を経過した時点で近視が進み続ける場合には、0.025%への変更や、他の近視抑制の治療を考えます。
- 気を付けることはありますか。
- お子さんが「まぶしさ」や、「いつもより近くがみえづらい」などを訴えるようでしたら、医師にお伝えください。点眼剤の濃度や点眼する時間などの調整が必要になります。
- 副作用はありますか。
- 主な副作用は「まぶしさ」です。瞳孔が広がるために起きるものですが、就寝前に点眼すれば朝には戻ります。「まぶしさ」を感じるようでしたら点眼剤の濃度や、点眼時間の調整をします。
- 急にやめてしまって支障はないですか。
- 中止するときには、徐々に薄い点眼を使用して中止をしていくように考えます。0.025%を使用していた場合には、0.01%を使用してから中止します。ご相談ください。
- アトロピンはどのような作用機序で近視進行を抑制するのでしょうか。
- 詳しい作用機序はまだ解明されておりません。ムスカリン受容体に拮抗作用(抗コリン作用)を示すことで眼軸の伸長を抑制すると考えられています。
低濃度アトロピン点眼治療についてご興味のある方は、医師またはスタッフにご相談ください。